HSS解説

 解説:Mareluxアンバサダー 川村圭吾

ハイスピードシンクロ=High Speed Synchro  以下HSSと書きます。
 
 最初にお断りしておきますが、水中でのHSS撮影は、HSS対応ストロボを持っていないとできない撮影法です。Canonの場合、更に専用コンバーターが必要になります。(Nikon,Sonyは調査中です)
現在(2023年8月)HSS対応水中ストロボはRetra Flash、AOI Q1だけです。
近々Mareluxから発売予定の水中ストロボApolloはHSS対応になります。
HSSという言葉は馴染みのない方でもFP発光という言葉は知ってるかもしれません。
カメラをHSSモードに設定して(または自動的にHSSモードになって)、FP発光機能のあるストロボでは撮影可能と言い換えられます。
HSS対応コンバーターを作ってるメーカーは2社あったと記憶してますが、UW technics社が有名です。
Canon純正ストロボ用のハウジングをオーダーメイドし、6ピン電気ケーブルでつなぐ方法もあります。
 

ハイスピードシンクロ HSS

   
 HSSの時の発光原理は、陸上ストロボで図解してるwebページが多々あるので検索してみてください。
 水中撮影においては多くがストロボ撮影になるので、ストロボ同調速度というものに縛られます。これはX点とかX同調速度とも表現され、カメラメーカーのHPでカメラのスペックとして記載がされています。CanonではSS1/200、NikonではSS1/250が上限になってることが多いですが、僕の使っているCanon R6ではメカシャッターの時にSS1/200、電子先幕の時にSS1/250が上限になります。
 
 実際X点を超えてSSを設定したらどうなるのか?ということですが、メカシャッターに設定。X点のSS1/200を超えたらどうなるか?
   
 
 
 
 
 
 SS1/250ではわずかですがSS1/320でははっきりと写真下部に黒い部分があります。X点を考えなければSSは1/8000まで上げることができますが、その場合通常発光ではほぼ真っ黒になります。
 
・私たちが使っている一眼レフ、FP(フォーカルプレーンシャッター)で起こる現象なので、レンズシャッターのコンデジでは起こらない現象です。TGなどでは普通にSS1/2000でもシンクロしますよね。
 
・シャッター速度がX点より早いと、シャッター膜が全開しきらず、発光も終わっているためシャッター膜が写ってしまう。
 
・本来ストロボの発光は一瞬(数万分の1秒)だけど、その時間を延ばすことができればすべてが露光される。つまりこれがHSS
 
・ストロボの発光時間を延ばすということは、人には認識できない速さで継続的に何度か発光している状態になります。例えばFull発光GN22のストロボでストロボが5回継続的に発光したとするとチャージされたパワーを5分割するのでFull発光がGN4くらいまで落ちます。SSによっては4分割で済む場合Full発光がGN5くらいになります。となれば、最大発光GNの大きなストロボが有利になるわけです。
 
以上がHSSの原理です。では具体的にどのように設定するのか?
  

CanonでHSS


 
 
 
 
 
 
 Canon純正ストロボが接続されている場合、またはCanon純正ストロボと認識されるように作られたコンバーターが接続されている場合、①の次に②の画面が表示されます。
 マニュアル発光しかできないコンバーターが接続されている場合、①の次に⑤が表示され、TTLやHSSが設定できません。 
 
 次にHSSが設定できたとして、通常の発光では考えられない結果が出ますので見てみましょう。Retra Flashを使用。共通設定はメカシャッター、F11、iso100、ストロボをHSS発光にしてFull発光。SSだけ変えていきます。
 
 
 
 
 
  
  
  

 ストロボ撮影の場合、被写体露出はF、iso、GN、距離で決まり、本来SSは関係ないはずですがHSS撮影ではSSを変えることによって被写体露出が変わってしまいます。画角のすべてを露光する間ストロボを光らせ続けるため設定したGN通りの明るさで光ることができないということです。
 しかし法則はあるので計算することはできます。上の6枚の画像はそれぞれSSを1段づつ早くしてますが、ヒストグラムを見比べると1段づつ暗くなっていきます。
 CanonとRetra Flashの組み合わせの場合、X点のSS1/200までは設定どおりのGNで光り、X点を超えるとSS1段につき露出が1段暗くなるということです。
 
 ここまでの検証はメカシャッターで行いましたが、電子先幕にすると不具合がおきます。
   
 
 
 
 
 
 メカシャッターでは全面光が当たってますが、電子先幕にするとSS1000あたりから下が黒くなってしまいます。
 この理由は詳しく説明できませんが、電子先幕だからとかキャノンだから、とひとくくりにできず機種ごとに違いがでるものなのでHSSを使う前に自分のカメラでのシャッター方式を試して確認してください。

HSSが可能なコンバーター

 
U/W tecnics社製TTLコンバーター
このコンバーターを接続するとCanonのカメラは純正ストロボが接続されていると認識し、TTLやHSSの設定が可能になります。
実はFisheyeで販売されているTTLコンバーターもU/W tecnicsで製造されたもので、
ロータリースイッチが10か所設定できるのですが、
世界で販売されてるもの
(少し古いバージョン)
Fisheyeで販売されているもの
0.マニュアル発光0.マニュアル発光
1.INON Z2401.No Signal
2.Sea&Sea YS-D12.Sea&Sea YS-D1
3.Sea&Sea YS-D2
3.Sea&Sea YS-D3Ⅱ、D3
03SOLIS,YS-D2J, YS-D2
4.Sea&Sea YS-2504.Sea&Sea YS-250
5.Ikelite DS-161,DS-160
5.No Signal
6.INON Z3306.INON Z330
7.Retra Pro(HSS)7.No Signal
8.Subtronic Pro1608.No Signal
9.Subtronic Pro2709.No Signal
 
0.2.3.4.6は共通ですね。果たしてファームウェアが違うのか?同じものだけど海外ストロボの名前を伏せているのか?
いずれにせよ、世界で新しいストロボが開発されるとU/W technicsが解析を行い新しいファームウェアを作ります。既にU/W technicsコンバーターを持っていれば、本社に送れば最新ファームウェアに更新してくれます。料金は不明です。
 

HSSを使った作例

 
 今のところHSSで水中撮影をしてる人は日本ではほぼいないでしょう。世界でもかなり少ないので、今後一般的になれば様々なアイデアが生まれてくるかもしれません。
 僕の考えている水中HSSのメリットがいくつかあるのでそれぞれ解説していきます。
 
1.ストロボスヌートを使い黒抜きにする。かつ被写体に対する被写界深度を浅くしたい場合。
 F5.6
 SS 1/8000
 iso 1600
 ストロボHSSモードFull発光
 夜のように自然光が無い状態ならHSSを使うまでもないですが、昼にしか撮影できない生物ならHSSを使うしかありません。
  
2.被写体にストロボスヌートを使い、背景はカラーフィルターを付けたストロボで着色。背景のディテールを無くしたい場合。
 F2.8
 SS 1/8000
 iso 400
 ストロボHSSモードFull発光
 絞って自然光をカットし背景を着色した場合、砂のディテールが写ってしまいます。
 
  
3.昼間に水面直下にいる被写体を水平方向から撮影し黒抜きしたい場合。  
 F16
 SS1/8000
 iso 800
 ストロボHSSモードFull発光
 角度によっては通常発光でも可能かもしれませんが、HSSで組み立てた方が自然光をよりカットできます。
  
4.昼間に水面直下にいる被写体を真下から撮影し背景が空になる場合。
 F16
 SS 1/2000
 iso 2500
 ストロボHSSモードFull発光
 目を見るとわかるようにストロボの影響は出ています。しかし全身をストロボの光で止めようとしたら目は確実に露出オーバーになり白飛びしてしまいます。自然光を透過光としてつかい色素胞をぶらさず撮影しようとしたらSS1/200では遅すぎます。SS1/1000は欲しいところです。
  
5.水面直下。ワイドでできるだけ太陽部分の白飛びを小さくし、光芒をシャープに写したい場合。
 
 F11
 SS 1/4000
 iso 800
 ストロボHSSモードFull発光
 
 計算上
 F22
 SS 1/250
 iso 200
 ストロボ通常モードFull発光
 で同じような写真になりますが、光芒のシャープさではHSSでしょう。

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先述したように現在HSS対応、FP発光ができるストロボはRetraとAOI Q1だけですが、どちらも最大発光がGN22。HSSでパワーを分割することを考えるとパワー不足と言わざるを得ません。HSSに限らずストロボのパワーはあればあるだけ撮影の幅が広がります
そこで今秋発売!
Marelux Apoolo 33
  
耐腐食アルミ合金
GN33
Full発光時のチャージ速度 0.6秒
マニュアル発光、TTL、オリンパスRCモード、HSS、MTL 対応
 
写真は機材の性能のみで決まらず、撮影者の技量のみで決まらず、ただ結果のみが真実。ですよ