MV-60 とは? |
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2026年7月、Mareluxから「MacroView 60 Wet Conversion Lens(100mm to 60mm)」、通称「MV-60」が発売されました。
MV-60は、90~105mmクラスのマクロレンズを約60mm相当の画角へ変換するウェットコンバージョンレンズです。67mmネジを備えたマクロポートであれば、メーカーを問わず幅広いハウジングで使用できます。
「ウェットレンズ」という言葉は日本ではあまり馴染みがありませんが、水中で着脱できる外付けレンズのことを指します。対して、水中で着脱できず、ハウジング内部に組み込んで使用するレンズは「ドライレンズ」と呼ばれます。
ミラーレス時代の撮影スタイルの変化 |
近年、ミラーレスカメラやレンズの性能向上により、水中写真の撮影スタイルは大きく変化しました。
以前は、ワイドならワイド、マクロならマクロと、専用レンズと専用ポートを組み合わせるのが一般的でした。もちろん現在でも、画質を最優先するならこのスタイルがベストです。
近年では、1本のズームレンズにワイドコンバージョンレンズを装着してワイド撮影し、クローズアップレンズを装着してマクロも撮影するなど、1ダイブで幅広い被写体に対応するスタイルが定着しつつあります。
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| ズームレンズと合わせて10mmや15mmの画角に変えるワイドウェットレンズ。Marelux Aquista | 単焦点マクロレンズに合わせれば等倍以上の撮影が可能。ズームレンズに合わせれば撮影距離を縮めてマクロ撮影が可能になるクローズアップレンズ。 | ||
100mmマクロを装着していても、大きめの被写体や予想外の生態シーンに遭遇し、「あと少し画角が広ければ……」と思った経験はあるはずです。逆に、60mmマクロを装着していて極小の被写体や寄れない被写体に遭遇し、「100mmを付けておけばよかった」と悔やんだ経験もあるでしょう。水中ではレンズ交換ができない以上、このジレンマは避けて通れません。
ただし、「大きめな被写体だから60mmが正解」という話ではありません。例えばクジラの撮影では当たり前のように超広角、広角レンズを選ぶでしょうが、望遠レンズでクジラの目だけを切り取った作品が世界的な評価を受けた例があります。
水中写真に「この被写体ならこのレンズ」という絶対的な正解はありません。何をどのように表現したいのかによって、最適な画角は変わります。
これまでは100mmマクロを装着していた場合、画角が足りなければ「どこを切り取るか」を考えるしかありませんでした。それも作品づくりの面白さですが、被写体全体を自然に見せたい場面では、60mm前後の画角が有利になることもあります。
MV-60の価値は、100mmを60mmに変えることではありません。
100mmのまま作品を作るのか、それとも60mm相当の画角で全体を見せるのか。その選択を水中でできるようになったことです。
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| 興奮色のでたヒレまで写したいと考えれば60mm画角は最適かもしれません。だた大多数の人がこう考えるでしょうからありふれた絵になるかもしれません。 | 両者の顔だけを切り取ったほうが闘争のイメージが伝わりやすいと考えれば100mmのほうが合います。切り取り方にセンスが必要になります。 | |
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| 100mmだときつい典型的パターン。2匹いたら2匹撮りたいけど、撮影距離を離さないといけないので浮遊物の写りこみやハレーションを気にする必要があります。 | 過去一番「もっと画角が欲しい」と感じたシーン。無理を承知で100mmで撮ってます。こんな出会いは想定不可能です。この時代にMV-60があれば。。。 |
ミラーレス時代の単焦点マクロレンズ事情 |
僕は長年Canonユーザーですが、一眼レフ時代からCanonには60mmクラスの等倍マクロレンズという選択肢がありませんでした。一方、Nikonには60mmマクロがあり、その使い勝手の良さからNikonを選ぶマクロダイバーが多くいました。
ミラーレス時代になると状況は変わります。
Canonには依然として60mmクラスの等倍マクロはなく、Nikon Zの50mmマクロは繰り出し式のため、若干もたつくしポート内に空間ができるためハウジングバランスや取り回しに影響がでます。そのため、現在でもマウントアダプターを介して一眼レフ用60mmマクロを使用しているダイバーは少なくありません。
Sonyにも繰り出し式の50mmマクロはありますが、主要メーカー全体を見渡しても、水中撮影に適したインナーフォーカス方式の50~60mmクラス等倍マクロレンズの有力な選択肢がないのが現状です。(一般的にインナーフォーカスレンズはAFが早く、繰り出し式はAFが遅く、ピントを迷うことが多くなる最短撮影距離近辺ではさらに時間がかかります。)
もちろん、高画素機であればクロップという選択肢もありますし、ハーフマクロレンズを使って後でトリミングする選択肢もあります。しかし、描写性能をできるだけ損なわず、高画質のまま画角を変えたいと思うのは自然なことでしょう。
MV-60は、100mmマクロの描写性能を生かしたまま、必要な場面だけ約60mm相当の画角へ切り替えられるという新しいアプローチのレンズです。
ミラーレス時代に失われつつあった「60mm前後の画角」という選択肢を、水中で再び手に入れられること。それがMV-60の存在意義だと僕は考えています。
浮遊系撮影の有力選択肢 |
現在はシーズン外のため、浮遊系撮影での実戦テストはこれからですが、インナーフォーカス50~60mmマクロレンズが存在しない現状で(特にCanonユーザー)、MV-60は大きな可能性を秘めたレンズになるでしょう。
これまで、限られた選択肢の中で工夫を重ねながら浮遊系撮影に対応してきました。しかし、多くの人が内心では「60mm相当の画角で、フォーカスの早いレンズで撮影できたら」と感じていたはずです。
MV-60によって、ゼロ距離までピントが合うことで、小さな浮遊生物を泳ぎながら、あるいはホバリングしながらでも撮影しやすくなります。被写体へより近づけるため、水中浮遊物の写り込みは減り、幅広いサイズの被写体に対応しやすくなることも大きなメリットです。
ただし、これですべての悩みが解決するわけではありません。先に述べたように、「浮遊系生物撮影なら60mm画角が正解」と決めつけてはいけません。決めつけはアイデアを殺します。撮影スタイルが変われば、ライティングも変わります。これまでより10cm以上先でストロボをコントロールすることになるため、システムバランスを見直す必要があるでしょうし、撮影距離のフィーリングもこれまでとは変わってくるでしょう。浮遊物の多い日に50cmクラスのリュウグウノツカイが出たら60mm画角だって相当厳しいです。
MV-60は浮遊系撮影を万能にするレンズではありませんが、これまで多くのフォトグラファーが抱えてきた問題を解決する、有力な選択肢になることは間違いないでしょう。
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僕は画角70mm、撮影倍率0.7倍のレンズを使ってきました。どちらもトリミングしてません。MV-60、画角60mm、撮影倍率0.9倍で同じ場面にいたら、左のテンガイハタはおそらく(計算が難しいので)もう少し離れて撮影する必要があり、ライティングはシビアになっていたでしょう。右の1cmほどのヒレギレイカは最短付近まで寄っていたので、やや大きく映っていたでしょう。 | ||
MFO-3との比較 |
Marelux MV-60を語るうえで、比較対象として外せないのがNauticam MFO-3です。すでにMFO-3を使用している方も多いと思いますが、これから100mmを60mm相当の画角へ変換するレンズの導入を考えている方にとっては、両者の違いは気になるところでしょう。
僕自身はかなり以前からMV-60が出ることを知っていたので、MFO-3は購入しませんでした。一方で生徒さんやゲスト、友人の中にはMFO-3ユーザーが多く、使用感や特徴について話を聞く機会は多くありました。
AF性能、周辺画質といった光学性能については、自分で同条件の比較撮影を行ったわけではないため、本記事では光学性能の優劣を論じるのではなく、実際に使用したMV-60の使用感と、公表されている仕様をもとに比較していきます。
海外の水中写真コミュニティでは「MFO-3のコピーではないか」といった意見を見かけることもありますが、僕は2023年10月の時点で、Marelux CEOからこのレンズの開発構想について直接話を聞いていました。僕からも要望を伝えており、それらの一部が実際に製品へ反映されています。僕にとってMV-60は、突然現れたコピー製品ではなく、完成を心待ちにしていたレンズです。
| Marelux MV-60 | Nauticam MFO-3 | |
| 価格 | 約¥105,000 レートにより変動あり | ¥132,000 |
| レンズ構成 | 4群4枚 | 3群4枚 |
| サイズ | 直径81mm 長さ119mm | 直径84mm 長さ114mm |
| 重量 | 陸上535g 水中35g | 陸上602g 水中120g |
| ワーキングディスタンス | 0mm~∞ | 0mm~1500mm |
| 最大撮影倍率 | 0.9倍 | 0.9倍 |
| フィルター対応 | 先端に77mm径のネジが切ってあり、77径の各種フィルターを付けることが可能。 | 別途M82フィルターアダプター(¥10,780)を取り付けて、82径の各種フィルターを付けることが可能。 |
| 2026年7月時点での情報 | ||
レンズ構成を見るだけでも、MV-60とMFO-3は異なる設計思想で開発されていることが分かります。ですがユーザーにとって重要なのは設計思想ではなく、実際にどんな違いがあるのかでしょう。
水中重量そのものはフロートを追加すれば調整できますが、フロートを増やすとシステム全体の前後バランスが変化し、取り回しにも影響します。
MV-60はMFO-3より約85g軽いため、カメラシステムのバランスを崩しにくく、この違いはスペック表では伝わりにくいですが、実際に長時間撮影する人ほど恩恵を感じるポイントだと思います。
まずは水中で重量の変化とバランスの変化。画角の違いが分かるように動画を撮ってきました。片手で対応できる程度の重量変化、ほとんどバランス変化なし、と言っていいでしょう。
メリット デメリット 注意点 |
本格的な実戦投入はこれからですが、現時点で感じたことや、構造から予想できるメリット・デメリットをまとめておきます。
軽すぎ問題
最初に驚いたのは、その軽さです。付属のネオプレーン製ポーチに入れた状態では、ポーチごと浮いてしまいました。水中で機材を紛失した場合、沈んだものより浮上したもののほうが見つけにくいです。3日ほど使用するとネオプレーンが潰れて浮力は落ち着きましたが、新品のうちは注意してください。
純正60mmマクロレンズがあれば不要?
「すでに純正50~60mmマクロレンズを持っているからMV-60は不要」という意見もあるでしょう。しかし、MV-60の魅力は水中で画角を決定できるだけではありません。
例えばスヌート撮影では、純正60mmマクロレンズはポートが短いため、被写体を大きく写そうとするとストロボは被写体に対して直角に近い位置から当てることになります。そのため影が強調されやすい一方で、バックライトは作りやすいという特徴があります。
一方、MV-60はハウジングと被写体の距離を保ったままライティングできます。手前側から寝かせた光を作りやすくなり、表現の選択肢は広がるでしょう。反対に、純正60mmマクロレンズで得意だったバックライトは難しくなるはずです。優劣ではなく、それぞれ得意なライティングが異なります。
また、ファインダーを覗いて撮影する場合、自分の顔やハウジング本体が被写体から遠くなります。泡やダイバーの存在に敏感な生物では、プレッシャーを少しでも軽減できる可能性があります。ハウジングに取り付けたフォーカスライトも被写体から遠ざかるため、同様の効果が期待できるかもしれません。
さらに、細長いレンズ形状を活かして、ハウジング本体を近づけられない場所へレンズだけを差し込める場面もあるでしょう。
一方で、デメリットもあります。レンズが長くなることで水の抵抗は確実に増えますし、重心位置も多少は変化するため、システムバランスの再調整は必要になります。また、撮影距離が変わることで、これまでのストロボポジションが最適とは限りません。MV-60を使いこなすには、ライティングを一から見直すくらいのつもりで取り組んだほうが良いでしょう。
MV-60は、単純に60mm相当の画角を手に入れるためのレンズではありません。撮影距離やライティング、そして被写体との向き合い方そのものを変えてくれるアクセサリーです。その変化を楽しめる人にとっては、非常に面白いレンズになると思います。
オプション品 |
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| バヨネットクイックリリースマウント | モノフリップホルダー | ダブルフリップホルダー | M67バヨネットマウントコンバーター |
そのため、頻繁に着脱する方には、ポート先端にバヨネットクイックリリースマウント、MV-60側にM67バヨネットマウントコンバーターを取り付け、ワンタッチで着脱できるようにしておくのがおすすめです。
さらに、瞬時に画角を切り替えたい方にはフリップホルダーという選択肢もあります。レンズを跳ね上げるだけで切り替えられるため、シャッターチャンスを逃しにくいのが魅力です。
僕はスヌート撮影をする機会が多く、ポート周りはできるだけシンプルにしておきたいので、フリップホルダーではなくバヨネットクイックリリースマウントを選んでいます。どちらが優れているというわけではありません。撮影するフィールドや撮影スタイルに合わせて選ぶのがベストでしょう。
作例 |
本格撮影はこれからで、新たな気づきもあるでしょうが簡単に作例を撮ってきました。
画像は拡大できます。





















